欧州連合のイラン原油ボイコットで漁夫の利を得る中国の石油商社

ウォールストリート・ジャーナルのブログに「イラン原油のボイコットで中国の石油商社が漁夫の利を得る」という興味深い記事が出ていました。

この記事を寄稿したのは『チャイナ・サインポスト』のゲイブ・コリンズと米国海軍大学(U.S. Naval War College)のアンドリュー・エリクソンです。

彼らは近年、中国は原油商社として強大な影響力を持ち始めており、今回の欧州連合のイラン原油ボイコットはそれらの中国の原油商社を利する結果になると主張しています。Read More »

キングオブオイル

石油とかベースメタルとかのいわゆる「コモディティ」については今

グローバリゼーションの進展とともに世界中で取引が行われてる。

 

でも、石油は(というか原油はだね)最初から自由に取引できる

コモディティ」だったわけじゃない。

必要性があってそのニーズを発見してサービスを提供できた人間がいたから

原油は「コモディティ」なった。

 

本書は(おそらく)もっとも有名であろうコモディティトレーダーである

マーク・リッチの歩みを通じて、

彼によっていかに原油がコモディティになったのか、

具体的にはなぜコモディティになるためのスポット取引の市場が

どのように出来上がっていったのかが書かれている。

この「原油のスポットマーケットを作った人間」をいう切り口が

これまでマーク・リッチという人物を説明するのに欠けていた視点なんだろうなあ、

とあらためて感じた次第。

 

マーク・リッチという人物には過去いろいろあったこともあって

(過去の影響力のわりには)なかなかちゃんとした人物像が伝わることは

なかったのだけど、本書は(やや本人寄りの記述だけど)

直近のことまでがちゃんと書かれているように思う。

おそらく本人がインタビューに応じたってことは珍しいことだし。

 

コモディティ特に原油取引に興味のあるかたは面白く読めるかと。

 

source: http://d.hatena.ne.jp/wizard81/20110228/1298874520

キング・オブ・オイル

キング・オブ・オイル マーク・リッチ~アメリカを揺るがした最強トレーダー~
ダニエル・アマン著、田村源二訳

本書はか つてキング・オブ・オイルと言われたマーク・リッチ(商品トレーディング会社のマークリッチ社(現グレンコア)創業者)の生い立ちと、彼が行った様々なト レード、そして脱税でジュリアーニに告発され、アメリカを去り、スイスに逃亡し、そこでビジネスを展開する様子、そしてクリントン大統領によって恩赦が与 えられるまでが描かれています。

前半はドイツのホロコーストから逃れてアメリカに移民したユダヤ人リッチが、大学を中退して当時最大の商 品トレーディング会社であったフィリップブラザースに入社し、そこで頭角をあらわすまでが描かれています。どこにでもいそうな普通の青年が、イラン相手に 大型の石油貿易を行った様子、そしてイランのシャー(王様)に取り入って、イラン原油のトレードで大きな利益を上げる事が描かれています。
しかし 当時のフィリップブラザースの方針に不満を持ち、飛び出してスイスに自らの会社を作り、危険を省みず様々な国と石油を中心としてトレードを行い、石油の 「スポット市場」を作り上げ、莫大な利益をたたき出すさま、その裏側が余すことなく描かれています。さらにジュリアーニに告発され、祖国アメリカを追われ るまで。

特に敵対的であったイランとイスラエルの間を取り持ち、スエズ運河が紛争により閉鎖された時、イラン原油をイスラエル経由で流す 極秘パイプラインを建設し、一部をイスラエルに流すことで「ウイン・ウイン」の関係を築き上げ、イラン革命によってイランのシャーが亡命したあとでも、ホ メイニのイスラム政権とも独占的な地位を築き上げたその手腕。ただ、それによってジュリアーニに目を付けられてアメリカを追われることになるのですが。。 そしてスイスを中心として紛争地域を中心としてリスクを省みずにトレードを行い莫大な利益を稼ぎ出す姿。そこには下記の「獅子のごとく」を読んでいても思 うことは、リスクが巨大なときに積極的にリスクをとり大きな利益を出した人に対するリスクをとらなかった人の反応はどこも一緒だな、と。リスクが報われた のに、それを「不正な利益だ」と騒ぎ立てる向きのなんと多いこと。

さらにジュリアーニという暗黒な裁判官の実態。本来簡単にリッチを拘束 できたはずなのに、「騒ぎを大きくして目立つためとしか思えない」ような行動をとり、彼の目論見どおりメディア露出が増え、権力を掴みにいく姿。しかも彼 が告発したその脱税などの犯罪も、法的根拠があいまいで恣意的であった点。しかしジュリアーニという人、ほんとひどい人だと思います(本書には出てません が、ゴールドマンの本のときも書きましたが、無罪であったフリードマンを騒ぎ立てて有罪にした件も含め)。日本の検察に通じる、「みずからの目的のため に」無罪の人間を有罪しにして騒ぎたてる姿は権力に取り付かれた人間の暗黒の一面が垣間見えます。
また、彼の元妻デニーズ・リッチについてや、 ジュリアーニのためにアメリカに入国できず、自らの最愛の娘が病気によって若くして亡くなったときに傍にすらいけず、その葬式にもでれなかった事、デニー ズが自らの音楽の道を進み始めた後の家庭事情、そしてクリントンによる特赦(イスラエルからの申し送りのことまで)の裏側も描かれています。

本 書を読んでいて思うのは、石油という一コモディティながら、現在生活に不可欠な商品であるがため、禁輸処置に苦しむ南アフリカに対して足元をみて値段を 吹っかけ、諸手に粟の巨大な利益をたたき出せた、といったことに代表される、単なる数字としての「原油価格」とは違う、生活にリンクした石油という商品の 特性。そしてその特性を知り尽くしているが上に巨額の利益をたたき出した、リッチという男のすごさ。

もう一つ、本書は触れていませんが、 間違いなくこうしたトレードの裏にはそれにファイナンスをつけた銀行がいるはず。本書では「バンカメ」「パリバ」とかしか出ませんが、紛争地域での原油決 済を行っていたともおもえず、間違いなくBCCI(バンク・オブ・クレジットアンドコマース・インターナショナル)等が絡んでるんだろうなあ、とも思いま す(とはいえ、リッチは用心深い人なので、その危険性は十分察知していたと思いますが)。ただ本人は「武器は扱ったことはない」といってますし、スイス国 内では合法とされているところでビジネスをしていましたから、ほんとのところはわかりません。前にメタルトレーダーにはソロモンブラザースがリッチと取引 をしていることが描かれていましたが。

しかし今では日常的に「WTI原油が~」といった「無味乾燥な」ニュースが流れますが、その裏側で 様々な駆け引きが行われ、巨額のマネーが流れ、実際に物が流れている、本物の”貿易”とまた、70年代から90年代にいたるグローバル化の裏側が見える、 とっても面白い本だと思います。

source: http://ttori.exblog.jp/15293600/

【書評】伝説の商品トレーダー、マーク・リッチ-広がる壮大な暗闇

10月15日(ブルームバーグ):遠い昔、古代アテネの法廷では、おごりは犯罪であり、判事らははばかることなく有罪を言い渡した。処罰はさらに上級の権力者の手に委ねられることもあった。

ギリシャ神話では、「おごりの後」には、主神ゼウスがガチョウの姿でこの世に遣わした天罰の女神ネメシスがやって来る。巨万の富を誇ったクロイソス王でさえネメシスを買収することはできなかった。

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「キング・オブ・オイル」の「シークレット・ライフ」を公開

商品取引のトレーダー、マーク・リッチ氏は、自分が「悪魔」と呼ばれてきたことを認めている。しかしスイス人ジャーナリスト、ダニエル・アマン氏の新刊本は、この億万長者を聖人とも罪人とも描いてはいない。

アマン氏は『ザ・キング・オブ・オイル ( The King of Oil ) 』の執筆にあたり、リッチ氏に長時間の取材を行った。イスラエルとイランが通商関係を結ぶことなど考えられなかった時代に、両国による石油パイプラインの 合弁事業を成功させたのは、リッチ氏の偉業の一つだとアマン氏は語る。

ルツェルン湖のほとりに住む74歳のリッチ氏はこれまでずっと疑惑の人物だった。そして確かに彼は、 いつも公明正大な立場にあったわけではない。イランとの不法取引や脱税容疑でアメリカ政府から告訴されていたリッチ氏は、逮捕を恐れアメリカへ1度も戻っ ていない。互いに商関係を持つことを拒む相手同氏を結びつけたリッチ氏は、多く人々の驚きといら立ちの中、ビル・クリントン大統領から任期最後の日に恩赦 を獲得した。Read More »